パウロのフィリピ宣教にまつわるエピソードです。ローマの植民都市フィリピは、かつては金鉱の産地として、パウロ 訪問時には商業地、交通の要衝として栄えた大きな町でしこが、このときはまだユダヤ教の会堂はなかったらしく、彼らは川岸のユダヤ人の祈り場で集まった人々と話し合います。パウロは紫布を商う裕福な婦人リディアと知り合い、彼女の一家は洗礼を受けました。リデイアはこの後パウロの有力な後援者となります。

 ある日祈り場へ向かうパウロの後を占いの霊に取り付かれた女奴隷がついてきて、「この人たちは、いと高き神の僕で、皆さんに救いの道を宣べ伝えているのです。」と叫び続けました。アポロンの神殿の託宣を伝えて主人たちに利益をもたらしていたこの女は、何か霊力、超自然力を備えていてパウロの持つ福音の力を感じ取っていたのでしょう。パウロはこの女の内にある霊にイエスの名によって出て行くよう命じ、すぐ効果がありました。女が占いの霊を失ったことで、奴隷所有者たちはパウロを訴え彼らは牢獄に入れられました。その理由は、ローマ法に従う植民地では許されていない外来宗教の宣伝をしているということでした。ユダヤ人、キリスト教徒はローマ社会では扇動者、治安妨害者と位置付けられていたのです。

 キリスト教はその成立のはじめから、神ならぬものとの闘いが宣教の大きな要素でした。イエスの御業の初めは悪霊につかれた人の癒しです。この闘いは今も続いているのです。真の神のみを神とし、神でないものをはっきり否定し拒否することが私たちに求められていることです。


                              


使徒言行録16章16〜24節
神ならぬものとの闘い
2002年8月11日